研究テーマ
持続可能な地域社会の実現に向けて、地域産業の低炭素化と防災機能強化を両立する地産地消・自立型地域エネルギーシステムを構築します。本システムは、小規模な自立型ナノグリッドを地域に複数設置し、各ナノグリッドで発電した電力は農業などの地域産業を対象に自家消費を前提とします。ここで、各ナノグリッド間を複数の電気自動車(EV)等で電力融通することで、各ナノグリッドで生じる電力の過不足を解消すると共に、余剰電力を人・物の域内コミュータとして活用し、単独のグリッドでは実現できない電力サービスを提供します。
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課題
2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、地域のエネルギーを地域で有効活用し、再生可能エネルギーの普及拡大や災害時に利用できるエネルギーシステムの重要性が高まっています。特に、過疎化が進み、電力需要地や再生可能エネルギーの適地が分散している北海道においては、既存の電力系統に新しいエネルギーを接続することが困難な状況となっており、地域における一次産業の衰退や防災機能の低下が懸念されています。
ミッション
MISSION01①再生可能エネルギーの導入を加速する、自立型ナノグリッド
北海道岩見沢市との共創により、岩見沢市の北村赤川鉱山施設に自立型ナノグリッドの実証サイトを開設しました。地元企業や農家の方々の協力のもと、温泉に付随するメタンガスや農業で廃棄される作物の残渣など安価な未利用資源を用いたマルチ燃料エンジンによる発電や、太陽光発電によって得られた電力を、電動の農業機械や農薬散布用ドローンの充電に活用し、農業の低炭素化に貢献します。また、災害などによる大規模停電時には、避難所の非常用電源として自立型ナノグリッドから電力を供給可能です。
MISSION02②自立型地域エネルギーシステムシミュレータ(SeRESS)
分散配置したナノグリッドを活用して、地域に合わせた様々なサービスを提供するには、長期投資計画としての各ナノグリッドの最適設備構成・配置の提案、また、提案された設備構成がEVを活用した日々の電力運用で得られる収益を評価し、長期投資計画にフィードバックするための仮想環境の構築が課題となります。さらに、日々の運用評価においては、天候・需要等の不確実性を考慮しならば、様々な目的に応じたEVの多目的電力運用を実現するための最適化技術の構築も必要となります。先ほどの課題解決に向けて、ナノグリッド相互連携により、地域の事情に合わせた多目的運用方針を提供するための自立型地域エネルギーシミュレータを開発しました。本シミュレータでは、EVの多目的最適運用、日々の運用評価に基づく長期投資計画、不確実性に対する演算結果のロバストネスなど、従来のエネルギーシミュレータでは実現できなかった解析機能を提供します。
MISSION03③実問題数理モデリングによる時空間多目的最適化技術
数学には問題を作る数学と問題を解く数学があり、複雑化する社会課題解決に向けて、問題を作る数学も重要となっており、北大連携により強化してます。本質課題を抽出し、明確な評価基準と共に社会課題を数理記述で提示することで、課題共有を通じた解決法の集約が可能となります。日立北大ラボでは、北大連携の下、実問題に対して、クラウド上で長期間アイデアを競い合うプログラミングマラソンを毎年開催しており、世界各地から多くの参加者が集まり、最適化技術の継続的な強化を推進しています。